落下する男/千月 話子
スチック球を
下からフーと吹くように
いつまでも ゆらゆらと
宙に停滞しながら
落ちて行く 男であった
心地良い ああ、なんて心地良いのだろう
35階のレストランで
カレーを頬張る少年の
それは 甘口であろうか
上品に銀色の器から
少しずつ白飯にかけて食べるな
ぐちゃぐちゃと掻き回せ
それが 男だ!
27階の窓辺に飾られた
あの花は・・・ガーベラだ
昔好きだった女に貰った花の名を
忘れられない 忘れられない
妖怪のようなその ごつい名に
相応しくない鮮やかな花弁よ
西洋の花を持つ
女の瞼は一重だった
18階の男子トイレで
後ろから
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)