晩春/春日響
 
ぽつり 雨が降るだけ
タイトスカートに染みができた
あなたの笑顔が見たくって
あなたが好きだって言う格好した
まだ来ない
いつの間にかさらさら雨が流れてあたしを濡らす
後れ毛が揺れる

おっきく立つ店の看板
何十メートル離れていてもくっきり見えると思う
誰が考えたの
どうしてそんなにアピールしたいの
小学生にでもなったのか
可愛らしすぎる疑問があたしをもっときつく縛る

ぎゅっと携帯握る
あなたは永遠来ない気がする
約束だけして忘れたふりも悪びれもしないでもう来ない
少し肌寒くて惨めったらしい
愛してるの言葉はいつか消える気がして
それでもあのベンツを待っている

もたげた空の下にあたしはいる
小さな小さなただのあたし
巨大な世界を思った
壊したくても一歩踏み出す勇気がなかった

まだ雨が降る
まだ見えない
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