母さん、あなたの笑顔が見たい/美味
 
母さん、どうして僕を生んだの


あなたが僕を見るときの
怯えたような引きつった笑顔が嫌だった
だから家を出たんだ
十六歳のあの月の綺麗だった夜に

母さんはピンク色の花が好きだったね
こっそり鏡台のところに置いておくと
それを手にとって幸せそうに笑う
僕の前でけして見せない笑顔は
僕の一番欲しいものだった
影から見ているだけで僕は幸せになれた
僕でも母さんを喜ばせられるのが何よりも嬉しかった

その行為は母さんに見つかるまで何度も繰り返された
僕がやっていたと分かったときのあなたの顔は今も覚えている


「母さん、元気ですか。
繁樹は、元気にしてますか。
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