マリア/dew
男がその果てに見たものは何だったのか?
その衝動は恐怖に似ていた
打ちつける音は涙の音にも似ていた
真剣であればあるほど
どこか馬鹿らしかった
何も残らないことを
男は知っていた
だけど躯が先に走った
身を任せた
幸福に矛盾して
常に悲しかった
ある日、友人を名乗る女が言った
でも所詮この世には何も残らないと思わない?
遺伝子なんて無意味よ
自我が消えてしまえば意味なんかないわ
物質が常に無を孕んでいることは貴方も知ってるでしょう?
男は泣いた
格好悪いくらい泣いた
だけど完全にホッとしていた
すべてが無意味なら
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