『理想空論』/しろいぬ
 
自ら右の頬を撲(ブ)って
自ら左の頬を抓る(ツネル)
これまでだってずっとそうして来たし これからだってきっとずっとそうさ

目には目を 歯には歯を って
肩をいからして歩いた白い廊下
痛みという言葉の意味を知って
連鎖を止めるんだと囀(サエズ)った教室の隅

くるりと反転した世界で
悟ったような暴言と
正当化された暴力は
全て手前の腹を刺した
全て手前の心を縁から削った

崩れた膝を叩いて伸ばし
自業自得と呟いて
何でもない顔をしてまた歩いた

俯いた顔に声をかけ
歪んで細められた瞳を真っ直ぐに見据えて
生きることを理想とした
時に偽善だと罵られたが 僕はそれを理解していた 誰よりも深く理解していた

自ら右の頬を撲(ブ)って
自ら左の頬を抓る(ツネル)

懺悔と共に呟いたのは
いつか本当になる と いう 願望


僕はそれを これまでずっと愚直に信じてきた
そしてこれからだって きっと
ずっと
そうだ

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