グレート・ノベンバー おわり/長谷伸太
 
どんなしかけの絵の具なのでしょう。後ろを見ると、まだ星が出ていました。前は朝、後ろは夜、真上を見ても、境界線はありませんでした。そのあいまいな世界から、たしかに前と違う、新しい年の新しい朝がやってきたのでした。
 太郎君は家に帰って、庭を少し整理しました。そして、秘密基地からノベンバーだった土を半分はこびました。これから、庭にも、秘密基地にも。木や花いろいろ育っていくでしょう。あ、咲いた花はね、きっとノベンバーのお陰ではなくて、太郎君ががんばって咲かすんですよ。でも僕は、その花を見ることはできません。
 長いこと、おひきとめしてごめんなさいでした。お別れの時間です。僕は生まれてから今日まで名前
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