浪人のアダージョ/ZUZU
アイドルではオナニーをしなかった。
だがその愛も挫折した。
ブレーブスも挫折した。
優勝はできなかった。
そうだ、そして、俺は、そば屋さんで、天丼かなんかを頼んだ。
べつにそんなに腹はすいていなかったはずだ。
いつも腹がすかなかった。
そしたら、そば屋の、おばさんが、
俺のことを、
かわいそうに、うんと食べなさい、みたいな目で、
天丼を、大盛りにしてくれた。
いいからいいから、サービスよ、と言った。
俺はどうしてそういう親切をするのか、
抗議したい気分だった。
親切にされたことのくるしさで、
これを全部食べなければ申し訳ないというプレッシャーで、
俺は結局、天丼を、ほとんど食べることができなかった。
お金をおいて、
逃げるように店を出た。
二度と、そのお店に行くことはできない。
俺は、いま、なんの話をしていようとしているのか、
頭が悪いせいで、よくわからない。
だが、昔、俺は、親切にしてもらったことは、
忘れないということを、たぶん言いたいのだと思う。
その年も、大学はみんな落ちた。
当たり前だったのだろう。
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