浪人のアダージョ/ZUZU
 
むかし、俺に親切にしてくれた人がいた。
初めて入ったそば屋のおばちゃんだ。
俺は浪人生でひどく痩せていた。
まるで勉強ができなかったので、
ひとつも大学が受からなかった。
どうやっても勉強なんかできるわけがない。
どうして、十八や十九の俺たちに、
勉強なんかしている暇が、あるのか。
考える必要もないことだった。
俺は毎日うろつきまわった。
街をうろつきまわった。
本屋をうろつきまわった。
レコード屋をうろつきまわった。
脳みそから足が生えているようなものだった。
周りのやつらは大嫌いだった。
反吐が出そうに嫌いだった。
予備校の寮でソフトボール大会があった。
俺は
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