異羽/木立 悟
 



雨のなかをはばたく雨
すべての音が去った後で
高く遠い静けさのように
冷気の指はやってくる
はじめて息を見つめるように
生まれ出る何かを見とどけるように



空が降り終わり
上からの光は消える
細かく互いに異なるすがたで
すばやくわずかに離れながら
水の針はかがやきになり
地しかない地をひたす風
新しい風となり打ち寄せる



たくさんのものに見守られ
飾られながら
何も見ず何も持たず
独りきりの言葉を
指だけで受けとめ
手のひらだけで受け入れ
腕だけでよろこびあう
めまぐるしく静かな
真新しい風の日に
次々と咲きひらく
冬の扉の日に










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