逆立ちの位置/霜天
白かったり、黄色かったりした
富士山が見える、という丘の上から
逆立ちをしてみても、思い描いたイメージは
思い通りにはいかなくて
立ち上がって、手のひらに付いていた
何でもないもの
を、ぱんぱんと払うと
じわり、と胸に広がるものが
いつまでも、引き摺ってしまう
そうして
驚くほど単一な空の色や
混ざろうともしない人の声を
振り分けることもしないで僕は
何でもないものを
何とか詩のかたちにしようとしている
暖かい午後、という午後
口の端から漏れたのは
誰でもない声だった、かもしれない
逆立ちをした後の
あちらこちらへ飛び交う心音
それを聞いてくれる君たちは
なぜかいつまでも優しかった
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