湿った夜の回折格子/たりぽん(大理 奔)
失ってしまったと
知らせに突かれて
霧雨の中へ飛び出したから
取り込み損ねた洗濯物のように
さびしく湿ってしまった
時計は無慈悲に
時を奪っていく装置
刻んで、刻んで
もう、そんな瞬間は
さして高くもない山が
苔生した岩のごとく湿って
つめたい吐息を
ながしていく、奪われながら
暗闇に生まれ置かれたとき
間違いなく僕らは
光より先に有った
有るが故に、奪われながら
すすきに絡む星座を見ながら
自然のはかない命や繋がりについて
夜明けまで語り明かしたのに
人間だけは違うと思い上がっ
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