風を纏うきみに/銀猫
 
風が吹き抜ける
うたから零れる水滴に
滲んだかなしみを知る

きみを包む町から
初夏の気配を纏って訪れたうたは
インクの匂いをさせながら
紙を静かに滑り落ちて
こころの中に海を創る


風が吹き抜ける
うたから溢れるほほえみに
きみの優しき心を知り
温かに循る血を思う

小さな冊子から
白く湯気は立ちのぼり
遠い街で揺れる路面電車の中に
満ちる情の深さへと
思いを熱く馳せて
わたしは小さく旅人になる


風を纏う人よ
日向にうたうきみよ
その傍で
わたしは鳩の羽ばたきを聴く
               
              ( 二〇〇六年  敬愛する詩友に )
 

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