折れずに伸びよ、タケニグサ/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
を持つと、電車に飛び乗り、あてのない一人旅に出てしまっていた。早まったかとも思えたが、旅を続けているうちに、いつのまにか発作は起こらなくなった。そしていつしか木賃宿に泊って、日雇いの生活をするようになったのだ。
そんな訳だ。妻、子供には、本当に悪いと思っている。まったく身勝手な男だと、我ながら思う。しかし、あの生活を続けていれば、今みたいに、発作におびえずには暮らせなかっただろう。私はタケニグサのような男なのだ。立派そうに見えるのかも知れないが、脆い男だ。だから、これ以上自分が壊れていくのにも耐えられなかったし、それに可愛い妻、子供たちを巻き込みたくもなかったのだ。
その代わり、この宿の庭に、あの「タケ」の種から成長したタケニグサを、大事に植木鉢で育てている。もう会うことのないだろう、私の子供たちのように、大事に。
もちろん支え棒付だ。もう無残な姿を自分と重ね合わせて泣きたくない。
お前もそう思うだろう? なあ、「タケオ」。
戻る 編 削 Point(2)