対話/恋月 ぴの
 
ハナミズキが総苞に
厳しかった冬の名残を残すように
ひとのことばの端々には
生きてきた人生の痕跡を引き摺って


それは醜さの現われでもあり
それはしがらみのようでもある


引きつりそうな口許を繕いで隠そうと
うつす鏡の<我>と向かい合う


  つばめが宙に舞い
  季節はそそくさと衣替えを急かし
  いつのまにか
  ハナミズキは冬の名残を抱いたまま


絶望の最中にあってもひとが希望の光を
僅かな明日の気配を求めるように
<我>のうちに求めるものは


  つばめの再来はこころに宿す
  果たすべく約束であったことを
  その約束とは
  来るべき日々の定めであったことを


たとえ それが一時凌ぎの繕いであろうとも
たとえ それが気休めの繕いであろうとも


「ひとの生きる術とはそんなものさ」と
思い立っては<我>の醜さ 静かに閉じる


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