風景に溶け込んで/山崎 風雅
明かりが灯らない側道を
綱渡りしてきた午前1時の伏見港公園は
トラックの行き交う騒音と
今年初めて聞く虫の音に染まっていた
オレンジ色した街灯が
川の水面に反射して
誰一人としていない公園で
その美しさを露わにしている
深緑の川でポチャンと魚が跳ねている
柳の葉はしなだれていて
春風が穏やかに優しく吹きぬけて靡いてる
今この地上で嘆く人
歓喜に包まれている人
眠る人
眠れぬ人がいるんだ
僕は独り
雲で銀河がさえぎられた夜空を見上げた
川の流れと時の流れ星の流れ
そのなかで飽きるほど繰りかえされる日々の生活
コンクリートとアスファルトの中で
もがいて悩んで苦しんで
アクシデントを怖れながら
窮屈な生活を強いられても
穢れされたくない気持ちがある
これから夏が訪れる
くすんで色褪せた風景も鮮やかに緑に栄える
清らかな空気を吸って澄んだ気分になった
たぶん僕の姿は
この夜の風景に溶け込でるに違いない
戻る 編 削 Point(10)