埠頭・小さな決意の/たりぽん(大理 奔)
にくくりつけられた
中古の冷蔵庫が扉をゆらす
甲板の真ん中より右寄りに寝ころんで
一冊の餞別を無造作に開くと
ちょうど無人の砂漠から
何度目かの帰還を
郵便飛行士が果たしたところ
どこかで誰かが
神戸、神戸とはしゃいでいる
もううんざりだ
砂漠まで行こう
渇いた渓谷で名付けよう
がたわわに実る薄皮の果実
それを葡萄、と
うっすらとくれていく今日
夜景になっていく大阪を
僕は故郷と名付けない
旅の終わりで
君に告げる
特別な名前の
そのために
1986 夏 まだ明石海峡大橋は起工したばかり
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