埠頭・小さな決意の/たりぽん(大理 奔)
学割九千八百円の
上海行きの船が岸壁から離れていく
思っていたよりも船は速く
もう見送りの姿も遠く
そのくせ船はゆっくりすすみ
行方は遙かにかすんでいるので
夢をもてあましてしまう
薄っぺらな財布の見る夢だ
大きな吊り橋の影
暇にまかせて
水晶の発振で刻む円盤を
腕時計と名付けたり
風景を閉じこめる小箱を
写真機と名付けたり
もう港は風景の中で
区別がつかないというのに
潮風は大阪湾の香りなので
気持ちを綴るための紙に
名前ばかり書きそうになる
機関音がさらにかん高く
振動はさらに低く
デッキにく
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