人食いびと/山本 聖
 
屠られたひとびとの笑顔が市場に並ぶ
敵対民族の屍の味はほんの少しターメリックの効いたエスニック・テイスト
最高級のラムにも似た風味です
幾千もの巻き毛の羊の穏やかな寝顔が軒先に吊り下げられるが
それはまさしく羊頭狗肉の呈をなし
ひとを食した者はみな下賎なる笑いが止まらなくなる

人食いびと
まったく、人を食った話だ

愛などということを考え始めると愛は盗人の如く一目散に走り去ってゆく
それを追いかけて食らいつけば
シチューにされる寸前の野うさぎの涙ぐんだ真摯な瞳の風味です
微かに幼げな若草の香りを含み
それを食したものはみな残忍なる笑いが止まらなくなる

いつも、嘘
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