明星/嘉野千尋
朝焼けがまだ
始まらないので
本当は昨日
あなたに届くはずだった
手紙のことを思った
夜明け色の
手紙を贈って欲しい
君と一緒に
指差して、星を探した
あの日の朝の
空のような
思い出にするものだけを選んで
別れの朝に抱きしめる
剛い心でいようと
願ったはずなのに
ただ頑なでいただけなのか
ぽきりと折れた、わたしの心
夜明けの空に
まだそっと
残されたままの星を
希望のように信じていたあの頃
あなたの眼差しを追うたびに
いつも遠くを見つめて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)