鳥瞰図、私の胸に/たりぽん(大理 奔)
 
狭苦しい世界から
こぼれ落ちてしまいそうに
鳥は横切っていく

この胸をしめつける病なのか
握った手のひらを湿らせるだけで
つたうものぬぐいもせず

鳥よ、名も知らぬ猛禽よ
あいつの最期に見た空を描いて
私の空に!

そうでなければ
記憶とはつながっていけない

   高層雲がちっぽけな月虹を映し出したり
   真っ黒な雨雲が飽和しきらないままで
   星空を横切りながら
   冷たく湿った高原の風が月を斬る

窮屈な体からはみ出した
私の旧いたましいは
季節の虫たちが
仄かな灯りにしてしまい

   蛍が描く空のかたち
   いや、切り取られなかった
   空を映し出し静かに揺れる水面に
   かきむしる記憶が沈んでいく

恋人達はそれを美しいと
きっと、必ず
言ってしまうのでしょう

   

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