Drawing/鈴本 蘭乃
 
とだ。色だって、お前が決めるんだよ。」
ああ、やっぱり、と、わたしは思った。神は何者も救わない。だけど、それが正解なのだ、きっと。
「さぁ、お前にしか描けないものを描く覚悟は決まったか?」
男はまた、先ほどと同じ問いをわたしに向けた。わたしは、答える代わりにその白いクレヨンを握って―――


ひどく残酷なことを言う男だった。だけどそれはすべて、最初から最後まで、どこから見ても、正論だった。わたしはその男が神だと思った。何者も救わず、すべてを生かし、すべてを殺す神。白色のクレヨンをかざして、男がそこに居たことを確かめようとしたけれど、もうそこには、人の気配すら残っていなかった。

握りすぎたクレヨンが、小さく、ぽきん、と鳴った。
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