Drawing/鈴本 蘭乃
「この世には、居なくなってはならない人間なんてひとりも居ないんだよ。誰かひとりが死んだところで、世界が回り続けることには何の支障もないのさ。お前もあいつもわたしも、大臣だろうが大統領だろうがね。」
ひどく残酷なことを言う男だ、と、そう思った。夢も希望もあったものじゃない、と。
確かに、この男の言うことに否定の余地はない。例えわたしが、今ここで死んでしまっても、世界は明日も回り続ける。誰かが泣いたって、それは世界から見れば取るに足らない小さなことだ。確かに、男の言うことは正論だ。否定する気も起こらないほどに、正論だ。その男は自分が何者であるかを名乗らなかったが、わたしはきっと、これが神で
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