狂光花/木立 悟
空がほつれ 花になり
空を淡く照りかえす
むらさきになり 羽になり
まぶしく逆さの金いろになる
廃屋がひとつ
いつか走り出す列車のように
窓だけをにじみかがやかせ
少しずつ冷えながらまたたいている
見えないものが飛び立ち飛び去り
明かりは花に隠されて
鳴り止まぬ夜 鳴り止まぬ夜
硝子の粉に映る夜
空を染めては流れ去る色
何かを紡ぎつづける影
手のひらと曇のあいだのうた
廃屋の屋根に降りつもる
窓の明かりをつまむ指さき
月への途中で振り向く指さき
消えかけた屋根にはじけるかけら
花を描いてちりちりと笑む
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