通過駅/霜天
 
いつも、煙草を吸いながら
遠い線路の先を見つめる人がいる
あの煙も朝には光に溶けて
オレンジ色になることを教えてもらった

冷たいほどやさしい空気だった

通過する私たちから
通過される人たちを見る
集まっては昇っていく煙は
白だけじゃないことを
流れていく窓にはいくらでも
境目に
曖昧に引かれた線なんて
飛び越えるものでもないだろう


通過する、される、目と、目


思い出そうとしたことも
忘れてしまった物事は
今もどこか、電車の手摺りに
揺られている、かもしれなくて
私、たちは
降りかかる、人や人から零れた
何か
を、振り払うために
ゆっくりと、傘
でしたから
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