ダンデリオン〜蒲公英の精霊〜/落合朱美
川縁の土手に根を生やした蒲公英たちは
うららかな春の陽射しを浴びて
いっせいに背を伸ばす
夏になったら向日葵になるの
ダンデリオンが通りかかると
みんなで声をそろえて問いかける
ねえ、
あたしたちはいつ向日葵になれるの
ダンデリオンはクスリと笑って
遠くの空を指さした
君たちは向日葵にはなれないよ
だって君たちはお日さまの落とし子
やがてはあそこへ還るんだ
蒲公英たちはいちだんと背伸びをして
ダンデリオンの指さす空を見上げるが
まだあどけない花たちには
お日さまの光は眩しすぎて
誰もその姿を捉えることはできなかった
川縁の土手に咲いた蒲公英たちは
やがて白い綿毛に生まれ変わる
ダンデリオンがパチンと指を鳴らすと
南から優しい風がやって来て
蒲公英たちはふわりと風に乗って
遠い空へと昇りはじめる
お日さまへ還るんだ
お日さまへ還るんだわ
無数の声が煌めく川面に木霊する
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