潮目/石川和広
わざわざ心に波を立てて詩を書くのはどうか
どうか
波は不思議な力で打ち寄せるもので
波がない時は、ない
海を見るものはもっとよく知っているだろう
ぼくの目の前には、海は現にない
ぼくの後ろに海がある
かもしれない
から
今日、森山直太朗の「さくら」を
精神科デイケアで、人一倍大きくうたった
桜は緑にかわっている
少し気になることはあっても
それほど波立たず
二本、電話をかける(一本は不通、一本は父親の声)
死者の目と病者の目が
お別れを告げに来ない日がある
そう思うとふと告げに来る
不安
まだ、ここにいられるのか
いつづけるのか
タバコをふかし
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