迎春/nm6
 
春、という5月の
光って市ヶ谷の駅の光って階段の小さな窓の
(その駅は、黄色い線の入った電車が水のほとりを走るところの)
ちいさい音楽を
グレーをつつみ隠す太陽色の平行四辺形が4つに
手のひらを握った大きさくらいで
世界にあたたかさという黄味がかかっていて
久しぶりにぼくらの真ん中のほうでつぶれそうな
ちいさい音楽を
「心を揺さぶる」なんてことばが足りていないか
写真なあまりとたんに見慣れてしまう
(その駅は、ありふれて電車が水のほとりで消えてしまうところの)
手のひらを握った大きさくらいで
世界にあたたかさという黄味がかかっていて
その上を滑走する二十数年間ぶりの自覚
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