記憶?失われた季節の中で/前田ふむふむ
 
閃光を浴びる波打つ腕を貫く
静脈の彼方から、疲弊した虹彩がため息を吐く。
朦朧とした街は、たえず銑鉄を溶かして
都会の人々の苦悩の鋳型を作り続けている。
すべての窓には、水がなみなみと注がれていて
季節の裾野を支える、旱魃で熱せられた太陽を
冷ましてゆく。

わたしは、祖父が語った草莽の祈りが、
青い空と共鳴していた気高い夏の記憶を
雲雀の囁きのなかで、
ひとつひとつ選別をしている。
それは、見つめ続ける届かない声。
水底を走る粉雪のざわめき。
失われた青年はいまも目覚めていない。
しかし、時は、埋もれてゆく磨かれた墓碑の
刻まれた文字のなかで
溢れる赤々とした沈
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