眠ってしまえばいい ( 2006 )/たりぽん(大理 奔)
 
湿気ばかり多くて
気温が上がらない夜は虫なんかの
季節を送る歌など気にせずに
眠ってしまえばいい

閉じた瞼の裏が
奇妙な色に透けるのはまだ生きている
証だと思えるのなら
眠ってしまえばいい

   生きるということがどこかで
   必ず死、何かの死と切り離せないのに
   繋いだ手にかいたあの汗のような言葉が
   危うく関係を絶とうとする

肌の触れあう弾力や
握った手の汗ばむ不快さをつながっている
手応えだと思えるなら
眠ってしまえばいい

言葉が救えなくて
遠雷の低い振幅に思い出され不意に
胸に迫ったなら
眠ってしまえばいい

   言葉を
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