成人式には、間に合わなく/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
ぞ」
 いつにない、所長の厳しい言葉だった。みな逆らえず、やらざるを得ない空気が漂った。つい、約束が違うとは言い出せなかった。
 
 営業は、当時は本当にイヤな仕事だった。
 前の専売所でのことだ。
 その新聞社の系列では、奨学生には営業活動は強制されない、というのが通例だったのだが、その年に限って、新しく創刊される雑誌の、年間購読のための営業をやらされる羽目になったのだ。
 夏の暑い盛りのことだったので、汗を噴き出しながら顧客約300名に頭を下げて回るのは、慣れていなかったせいもあって本当に大変だった。
 運良く、まだ出来ていない者もいる中でノルマを達成はしたものの、せっかくもらっ
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