断片/たもつ
固定された都市。流入する者と流出する者。
その背中には皆一様に大きな鳥のくちばしが
あり、そして光沢がある。鳴くわけではなく、
また、捕食するわけでもない。ただそれは背
中にあり、そして光沢がある
わたし、と自分を名乗るわたしはノートの
罫線と罫線の間に父と母の名を交互に書き連
ねている間に大人になった。両親の名を知ら
ぬ人は何を書くべきなのだろうか、そう考え
ると忽然と書くことがなくなってしまった。
駅が泣きそうな顔でやってきて、列車をホ
ームに停車させたいのですが、と申請書のよ
うなものを差し出す。わたし、と名乗るわた
しは許可権者ではなかったが
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