民謡/石畑由紀子
縁側
手相を診てあげる
と広げさせた手のひらの大きな皺は
私とそっくりで
ああ、こんなところにも
血が隠れとった
と同じ眉をして笑った
今年も本家から柿が届いたから
お前もすこし持ってけ
ああ、それと
おじぃにも供えてやれ
すねたら困るから
手のひらの細い細い溝に刻まれた唄を
西日の針が鳴らすので
おばぁは鼻唄で応えながら
この歳じゃもうよう行けん
眩しそうに
目を細める
剥いてくれた柿をほおばると
手のひらが濡れて
私の知らない懐かしい匂いがした
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