いのちの荒野?不毛の夏/前田ふむふむ
朦朧とした夢のような時間のなかでみた原野で、
悲しく虚無を抱えて蹲るわたしに会いに行くのだ。
そして、うな垂れているわたしに、
そっと、やさしく手を差し伸べるのだ。
そのことのために、わたしは、この乾涸びた姿で、
目まぐるしく変転する季節の足取りを踏みしめるのだ。
いまという、瑞々しい果実を、この貧しく倒立している、
いのちの勾配のなかで、噛みしめるために。
いまという、青々とした
潤沢な精神の春を迎えるために。
手折った鳥が不安な眼で飛び立つ。
空は、無言に色づいている。
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