いのちの荒野?不毛の夏/前田ふむふむ
白鳥が悲しい最後の鳴き声をあげて飛び立つ、
夕暮れの鮮烈ないのちの地平線が、
赤いインクで跡形も無く修正されてゆく。
絶えず流れ出ている蒸留水の蛇口に、
コップを置いて眺めても、
決して溢れ出すことがない。
適量の寒々しい冬が、
剃刀の上を滴る血液の絶叫のなかで、
煌々と目覚めている。
燃えるような熱が昇華しつくして、真率な時間が消え去り、
わたしは、生も死も馴染まない、曖昧な広大な荒野を、
ひとり少年の儘の姿をして、誰一人としていない廃墟の前で、
うな垂れている。涙も忘れて、暗い紙のようなからだは、
風に吹き飛ばされようとしている。
そこでは、過去の音階が、
楽
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