我ら土くれ/きりえしふみ
わたし わたし!
私は わたし わたしは!と
主張したがる 私なのだが
わたしは 小さく わたしは 未熟な
ただの土くれ
それに過ぎない
私は わたし わたしは!と
叫んでいたのを 哀れまれて
震える木々から 風やら土から
いたいけさを 愛でられて
溢れる命を
分け与えられたに過ぎぬのだ
わたし わたし! と何ともね
君も 私も
聞ける耳には 詮をしがちだ
陽に光を分けてもらい ね
風に櫛を通してもらい ね
今此処に在る 我らなのだが
わたし わたし わたし!とね
まるで自力で 生きゆく口振り
そよとの風は 笑ったよ
「小さい頃に戻ってね 裸足で立てば 気付くかな
木々に並べば 気付くかな
小さい頃に戻ってね 波乗りすれば 気付くかな
海に浮かべば 気付くかな」
木々は変わらず 君よりのっぽで
海の巨体を 私は今だに
飲み干せるとは 思えない
(c)shifumi_kirye 2006/04/28
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