ブレイン・イーター/do_pi_can
見分けがつかなくなり,たまの意識が清明な時には,
自分の過去を振り返り,涙ぐまれた事でしょうけど,
それを言葉に出す機能は既に破壊されており,思い出す人生の様々な事柄が,
脳内に記憶と言うエキスとなって溜まって行った事でしょう。
そして,1980年のある日,看護に疲れ果てた親族が寝静まるうちに,
かつての夫の魂に迎えられ,天に召されたのです。
遺体は,65年の記憶を抱いたまま,本人の意思を尊重して
大学の医学部に提供され,医学を学ぶ若者の解剖実習に使用され,
切り刻まれました。
そこから取り出された,65年の記憶を抱いた脳は,その年の夏,夢多き若者であった私の手の中にあったのでご
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