ブレイン・イーター/do_pi_can
 
,私は,朝から異様に興奮しておりました。
今日,僕は,何十年分の愛や,歓喜や,悲哀が詰まった
人間の脳を解剖するのだと。
それは,宗教家が,荘厳な教会の中で感じる崇高さを秘めた
興奮と同質でありました。
父や母との思い出,恋愛,わが子への愛情,もしかしたら悲しい別れ,
伴侶との生活,戦争,そんな物が既に脳より沁み出で,
私の周囲を取り巻いているかも知れぬ。そのように感じました。
今聞く猫の声も,実は,何十年も前に
脳の持ち主が聞いていた声かも知れぬ。
実験室へと向う道々の空気にも,普段は混じるはずの無い
「時」という要素が混じりこみ,
濃密な大気を形成しているように思えまし
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