現象フェーン/吉岡孝次
 
湿った荷を下ろした、
身の軽さで
熱く
駆け降りてゆく。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

気象予報士を得意がらせ
異性間に汗での交歓を齎して
海に
消えてゆく。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

さあ 今年も家を焼くぞ。
お前たちが大切に抱え込んできたものを
少しだけ灰燼に帰してやる。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

好かれもせず 
嫌われもせず
そのようにして一目も置かれぬまま

我が名は
フェーン。
現象フェーン。


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