歴史は結局,街に吸収されていく/do_pi_can
 
季節はめぐったばかりだというのに

いきなりの寒気で

空がずいぶん高く背伸びしているのを

ビルの二階から眺めながら,マグロのすり身と卵をかけた丼を食べる。

北国の雪解けを思わせる青空と雲の下を

時折の強い風に身を縮める老婆

その横を希望にツンと胸膨らませた少女の群れが

賑やかに通り過ぎる。



私の耳には,戦場の音は届かない

確かに流されている血の匂いは届かない



飛行機が大きく旋回して南へ向かう

通りで大型トラックがクラクションを鳴らす

老婆が,横断歩道を渡りきれずに立ち往生している

その両側を車がすごいス
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