海?春の中で/前田ふむふむ
鳥がたえず生まれでてくる河口と、
海岸線が睦みあうところから、
浮かび上がる金色の揺り篭を、ひかりだけの、
時間を燃え上がらせた、
空間を切り裂いた、
純白の闇の空に沈めている。
聞くがいい。
燃えだした春の冠が、
盲目のくちびるをパレットに絵具を敷き詰めた、
複雑な音色の言葉の花束で飾り立ててゆく。
耳を澄ませば、微細に、
繰り返し続けられる音響の糸たちの舞踏。
わたしが、両手を差し出すと、
溶けはじめる透明な一枚の楽譜が、
海の変転する波紋と抱擁する。
わたしは、限りなく憧憬する青い肉体の指先を、
包み込むひかりの螺旋階段を昇りながら、
ゆっくりと、爽やかな海風に身を任せて、
白い帽子をかぶった少女が一人戯れる、
少年の日の海を描いている。
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