海?春の中で/前田ふむふむ
絶叫する空
描かれている発光する夕暮れの子宮の瞬き。
手を振る少女は、
鮮血の銀河を潤すために海で水浴をする。
薄紅色の尾びれが、激しく水面を叩いて、
青いページは、下半身から、少しずつ、
霧雨の華やいだ庭園を書き足してゆく。
かつて隠されていた乳房を、
はじめて見た季節の純朴な熱狂は、
控えめに眼差しを落として、
海辺の砂を滑らかに撫ぜようとしている。
眼の前を鮮やかに嘔吐した冬は、世界を見捨てたために、
墨のような淀んだ湿り気が、生ぬるい曲線を想起させて、
水平線の谷間に呑まれてゆく。
見るがいい。
夥しい春のにおいが、わたしの視覚を麻痺させて、
海鳥が
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