春の吐息/紫翠
 
ゆらゆらかげろう 
玻璃の向こうに 
柔らかき草萌ゆる 
丘、ありて 
音もなく 風渡る 景色に 
あきもせず 
遥かお山はぼんやりと 薄蒼く 
頬杖つく 
椅子の背は 
しっとりとして円い

たとえようもなく 潤い満ちた 春にありて
ひとり 秋のうたくちずさめば
橙に染まる木々の匂い
静まりゆく いのちの遠き声
ふれる陽に 結晶し 昇華し
やがて消えゆく 
その秋の 

軌跡をなぞる 
わたくしの仄かな体温


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