われわれは技術でできている/安部行人
違いに高いのである。
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ふりかえって、われわれは言葉をどう扱っているか。
歩くことと同様に、言葉もまた学習によって身につく「技術」である。そしてまた、歩くことと同様に、さほど意識もせずに言葉を使って昼飯を注文したり、苦情を言ってみたり、愛をささやいたりする。
優れた詩人は、日常に埋没し、それが技術であることを忘れてしまうような言葉に目を向ける。アスリートが自分の一動作を見つめ直すように、詩人は自分の言葉のひとつひとつの意味を問い直す。
言葉のない行間と空白の意味をも問い直す。
そこにはまぎれもない、言葉についての技術がある。
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このように言うと、「技術があればいいというものではない」という意見が上がるだろう。
それはその通りである。技術があればいいというものではない。
だが勘違いしてはいけない――技術がないのはもっと悪いのだ。
<シンプルで凄いものは、技術を捨てたからそうなったのではなく、技術を凝縮し尽くした結果そうなったのである。>
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