天地/山本 聖
オオカミの皮を被ったトイプードル犬と
ライオンのたてがみを纏ったペルシャ猫がやってきて
逆立ちをしながら訝しげに問う
お前は何故に逆さまでないのか?
お前は何故に柔肌を滑らせているのか?
私は逆さまにならんと空を蹴立てあげ
自らの基盤を蹂躙し
霜の降りた芝の上に爪をたてて笑ってみる
南半球のとある川にて
真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐであった大鰐が
これまた真っ直ぐなる大蛇に食われたとさ
そして蛇の腹の中で逆立ちをしたら
腹がポンと割れて共に水の底に沈んだとさ
沈んで沈んで、沈みすぎて
北の霜降る私の庭からひょっこり顔を出し
「ああ、やっと逆さまになった」と嘯いたとさ
私は
ひとの皮を被ろうか
そうしたら
少しは楽に贋者らしくなろう
少しは楽に逆さまになろう
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