至高聖所/山本 聖
天井裏の住人からいつまで待たせるのだという私信を頂戴したのだけれど私は彼女をそれほどまでに長い間待たせたのであろうかと頭を抱えた私の昨今の記憶は曖昧で彼女と最後にいつ私信を交わしあったのかは定かではなかった
水槽の水は青緑色にゆらめきその中に潜水帽なしの裸の頭を潜らせてみれば赤子のように頬を吸ってくる吸いつきナマズのきょろりきょろりと瞬きする顔がまるで本当に自分の膣から這い出した嫡子のようで思わず水槽の硝子に映った我が面がナマズのようでないか確認する
私の膣から這い出すのはナマズではなく私の言葉たちなのだぞろりぞろりと単語やちょっと気の利いたような文句が膣から生まれ出た後太腿をしばらく徘徊し脊
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