リノリウム/唯川
あれもきっと
リノリウムだったのだろう
少女はリノリウムを抱いたまま死んだが
リノリウムに抱かれたまま死んだことには気付かなかった
壁際が白すぎたせいかもしれない
リノリウムではなくなった子犬
結局することがなかったので
一緒に焼かれてやることにした
果てしなくない夜の海
狭すぎた棺の中
ただ余白を眺めていたかった
ただ余白を眺めていたかった
ただ余白を眺めていたかった
必然が意表をつくのを待ち呆けている
点火
そうだ
少女は
なりたかったのだ
もう床も冷たくないよ
報告がてら子犬はもの言わぬ記憶に
リノリウムと名付けた
そしたら
いろんなものが渦をまき
灰になって
少女は安らかに燃え尽きた
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