リノリウム/唯川
少女がリノリウムに憧れていた
何なのかまったく知らなかったけれど
ラ行でのはじまりがきらびやかで
口に出すとほどよく甘いところが
なんとなく好きだった
床が嫌いで
一人のつめたさが染みたから
子犬のぬいぐるみを抱きしめて眠る
そうすれば怖くなかった
いつしか少女は名付けていた
たからものに
たからものを
リノリウムと少女は
ひいらぎを折り曲げてひいひいしたみたいに遊んだ
あたたかくもないぬくもりが
胸の底
うずきを隠した
謳って
笑って
踊って
傾いで
最後に血を吐いた
葉脈が少女だった
朦朧の中で手を伸ばす
ひいらぎ
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