金沢にて/do_pi_can
 
君の思い出を引き連れて
春の陽気の古都をさまよう

新しいものと古いものとが
同居するこの町を

訪れたのは
二十年ぶりか

あの頃の私は
ここにはいない

もちろん
あの頃の君も
君は、どこにいるのだろうね

今日の古都から
あの頃を思い出すと

まるで、
水底から見上げるように
君と私の
姿が揺らめいている

間違いだったとか
正しかったとか
そんなことは
どうでもいい事だね

あの時に買ってあげた
安物の櫛は
もう捨ててしまったろう

雲流れ行く、この古都の
橋の上から

過去と言う名の果実を一つ
投げた先の波紋が
心に染みる

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