愛するこころを忘れずに/恋月 ぴの
あなたに「俺を愛せ!」といわれても
愛することのできないわたしです
あなたの冷たい仕打ちのおかげで
路傍の露と消えた二百十万の御霊を思えば
どうしても愛することはできません
市谷で散ったあのひとのこころざしを
無駄にしたくはないけれど
愛したいのに愛せない
それはきっと あなたのせい
お慕いしていましたあのひとは
いさぎよさに散りました
桜の花が散るように
我が身を 我憂いを散らせました
そんなあのひとの凛々しさに
わたしは恋焦がれ
今でも忘れることはできません
あなたのうたを歌うのは
あなたのためなんかじゃない
あなたの印を
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