いのちの情景/前田ふむふむ
えず枯葉のように舞い落ちて、
都会の妖婦に、いつか埋もれてゆくのだ。
静寂が波打っている。― 赤い血はまだ居るのか。
混沌が朽ち果ててゆく。― 青い息は、まだ聞いているのか。
わたしは、まだ、此処にいる。
見捨てられた世界の
止め処なく、沈みゆく地平線のはてに
置き忘れた栞の一行のきらめきの中で、萌え出す、
手を差し伸べるあなたが、津波のようにどよめきを上げて
押し寄せてから、凪いだ鬱蒼とした森の灯台になり、
垂直に横たわってゆく。
わたしは、運命が軋みをあげて、綻びる古城の季節に
たとえ、抜け出せない寂寞とした厳寒の沼地のなかで、
もはや言葉を失った棒状の鉄杭になった足を束ねられても、
あなたの手を、しっかりと抱きしめて
このいのちの絶えることの無い激痛を携えて、
瞳孔の暗闇の中に広がる、赤く染まる夕暮れを
いつまでも、諦めることなく歩いていくのだ。
生まれ変わる瑞々しいいのちが一滴の源泉を射抜く
黎明の大鳥が訪れる、その時のために。
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